Summer Sonic 2016 2日目@幕張

2年ぶりのサマソニ行ってきました。この2年間で音楽の聴き方もだいぶ変わって、このところはまったく新譜を追えていないけど、やっぱり夏はフェスの一つでも行かねば終えられませんので。また今回は1型発症後初のフェス参加ということで、灼熱の夏フェスをいかにインスリンペン一本で乗り切るかという実験もしてみたかった。低血糖で倒れたらどうしようかと思った瞬間もあったけど、まあこの通り無事に帰ってきてレポートなぞ書けているので、今回のサマソニで気をつけたことや食べものの話なども書ければと思います。



・Nothing but Theives @Marine Stage

10時半頃会場につき、まずはマリンの3階席でUK、サウスエンド出身の5人組をまったりと。予習ゼロで臨んだのだけど、最初の一音からまったく迷いがなく、目の前のオーディエンスではなくてマリンフィールド全体を揺らしにかかる自信に溢れた演奏に、これはもしかして今後すごいバンドになるのかなと思いました。ダイナミックかつ精緻なアートロックはFoalsを思わせるけど、ボーカル、コナーくんの圧倒的な歌声がぐんぐんとバンドを牽引するにしたがってMuse的な大仰の美学が迸りはじめて、最後はおおっと唸ってしまったのでした。セットリストがまったくわからないのでこの曲がよかったとか言えないんだけど、終盤のほうにあったマシュー・ベラミーが"Where is My Mind?"をバックに歌ってるみたいな曲が好きだった(意味不明)。


・ソニ飯①中とろ漬け丼・きゅうりの浅漬け@焼津まぐろ茶屋

ランチはおなじみのまぐろ〜。写真はないけれど、野菜も食べないとなあと思い、申し訳程度に丸ごときゅうりも。サマソニのような場は食事管理・血糖管理がとても難しいです。栄養成分表示は当然ないし、どいつもこいつも脂っこいし、食べるスペースは狭くていつも混雑しているから注射しにくいし。でも脂っこい食べものは血糖値を下げにくくするので、夏フェスのように動きまわってエネルギー(グルコース)を消費する=血糖値がぐんぐん下がる環境ではかえって積極的に脂をとったほうがいいと思います。事実この日も脂に救われたので(後述します)。

中とろ漬け丼は半凍状態のマグロのシャリッとしてトロッとした食感が夏の暑さに心地よいのどごしで、胡麻の香ばしさでご飯がすすむ安定のおいしさ。きゅうりもこの日はよく漬かっていてよかった。ちなみに食前血糖が92くらいで、このあと動きまわることも考えて3単位うちました。


・Pop etc @Sonic Stage

正直The Morning Benders時代の名曲"Excuses"が大好きなだけで、改名後はほとんど追っていなかったのでどんなもんかなあと思ったけど、いやはや素晴らしかった。ベンダーズの頃に今回と同じくソニックでライブを見て演奏と歌の確かさはよく知っていたけれど、それから数年、こんなに完成されたバンドになっていたとは知りませんでした。知的で艶やかなクリス・チュウくんの歌声はR&Bの色っぽさとインディーギターロックの繊細さをうまく橋渡ししているし(相変わらず歌がうんまい)、演奏は以前にも増してクリアで引き締まっていた。バンドのルックスからはナイーブそうに見えるのだけど、ライブを聴くと骨のしっかりした内気すぎない開かれたインディーポップをやってるのがよくわかってすき。

ただ路線変更後のスタイルでいいものが作れていることの裏返しとして、いかにもゼロ年代末の西海岸インディー然とした"Excuses"の置き場にはやや困っているのかなと感じた。ライブの中盤で演奏してくれて相変わらず大名曲ではあったんだけれど、この曲がなくても今回の彼らへの評価は変わらないかな。大好きな曲だけど、彼らがあの曲のすべてを洗い流すノスタルジアの波に飲まれることなく、今この時を充実させているのは嬉しいし、新譜も聴いてみようかなと思いました。(あまりによかったのでライブ後Tシャツ買いましたよね)。


・Blossoms @Sonic Stage

マンチェスターの南、ストックポート出身の5人組。といって想像されるあんな音、こんな音。それはだいたい彼らの音楽とそう相違ないのではないでしょうか。今回のライブで数曲聴いただけでは特別なものは感じられなかったんだけれど、スミスからローゼズを経て今も受け継がれるキラキラとしたギターはマンチェスターの偉大な財産なのだと彼らの演奏を聴いていて思った。先に録音音源を聴いてたら、また印象が違ったかな。


Two Door Cinema Club @Marine Stage

過去にサマソニで2回ライブを見ていて、ソニック→マウンテンとステージが大きくなっても会場の隅々まで沸かせる熱いライブ巧者ぶりはわかっていたから安心して見ました。

今回はダンスよりもロックが似合う灼熱のマリンということもあってか(気温がもっと高い年はあったけど、今年は湿度が尋常じゃなかったので不快指数マックス。蒸し殺されるかと思った)、これまで通りの「ギターロックのフォーマットでエレクトロ/ダンスをやる」というUKインディーらしいスタイルを下敷きにしつつ、よりストレイトフォワードなロックとして響いてきたな、と(印象論ですが)思いました。とはいえ、ジャキジャキしたギターのアンサンブルでガシガシ踊らせてくるところは変わらず最高だったし、"I Can Talk"のアッオアアオッの掛け声とか、個人的にファーストで一番好きな"Eat That Up, It's Good for You"の"It's too late!"のコーラスとかこの人たちはライブに勢いをつける着火点をいくつも持っているから強い。

それにしてもスタンド2階で見てたけどまったく日を避けられなくて最後のほうは頭が湧きかけました。ラスト2曲は耐えかねてスタンドを出て喫煙スペースわきあたりで風に当たりながら聴いたけど、そっちのほうが断然気持ちいいし音も冷静に聴けます。


・ソニ飯②ラッシー@どこのだか忘れた、、

せっかくだし甘くて冷たいものの一つでも食べたいなーと思ってサムライジェラートを覗いたらそこそこの行列だったのでラッシーに変更。とてもサラサラしたラッシーで個人的にはもう少し濃厚なほうが好みだったけど、かなり甘くてエネルギーチャージには十分でした。血糖180程度で少し高めだったから3単位打ち。


・ソニ飯③よくばりセット&クバーノ@Cafe Habana

19-21時の間レディオヘッドに張りついているということは、必然的に夕飯がその前か後になってしまうのですが、どちらになってもわたしにとっては厄介で。レディへ前に食べるとそこから翌朝までほぼ何も口にしないので夜間〜翌朝低血糖が心配だし、レディへが終わる前まで食べないと今度はレディへ中に低血糖になりそうだし。考えあぐねた結果、ライブ中に低血糖が一番マズいということで、レディへ前に脂っこい食事をとり、血糖値のもちをよくする方向でいくことにしました。

ということで、心おきなくハイカロリーなものを食べようと思い、前日から気になっていたキューバン・ダイナーCafe Habanaのよくばりセットとクバーノ(キューバ風サンドイッチ)を。


よくばりセットはお肉とライス(味つけがよくわからなかった)とグリルドコーンのプレート。このグリルドコーンが、引くほど粉チーズがかかっていて悪魔的な美味しさ。カイエンペッパーの辛さもしっかり効いていて、チーズのコク、コーンの甘みと入り混じって最高だった。クバーノ(食べかけ失礼)は先日浅草のスケロクダイナーで食べたものよりもパンがふかふか、お肉のボリュームも満点で、肉汁がしみた小麦粉ってほんと美味しいなと思いました。血糖190くらいまであがってしまったので、ラッシーを飲むときに打ったインスリンがまだ残っているのをわかっていながら8単位打ち。結局これが失敗だった。


・James Bay @Sonic Stage

夕飯を食べながらのんびり見ようと思った、UK出身ナイスルッキングガイなSSW。いやしかし、そんな悠長な気分で見るのはもったいないエネルギッシュでかっこいいライブだった。例によって予習ゼロであまり曲は知らなかったんだけれど、ギターが泥臭くガシガシ鳴るロックンロールをあのスキニーな躯体で熱っぽく歌ったら、そりゃあかっこいいに決まっている。各曲ともメロディーがしっかり立っていて、ソングライティングの才もばっちりなのがわかった。30分弱しか見られなかったのが名残惜しい。


・Mark Ronson @Mountain Stage

ミーハーちゃんなので、当然当代きっての伊達男を一目見ずには帰れません。Ronsonと書かれた真っ赤なジャージ(かな?)を着こなす40才。いけめん。時折エアギターの仕草を見せたりするのがギターバンド好きのインディーキッズみたいで、安易な言い方だけど、"音を楽しんでいる"のがよくわかった。70・80年代ファンク/ソウルからゼロ・テン年代のR&B/ヒップホップ、インディーミュージックまでをまぜこぜして、メインストリームとオルタナティブを行き来する楽しさをロンソン自身が味わいながらDJしている。レディへのために泣く泣く"Uptown Funk"前で切り上げたけど、いいかんじに体が温まったところで、たゆたうサイケデリアが気持ちいい"Daffodils"が聴けたからまあ満足かな。


・マウンテン〜マリンの大移動、あるいは低血糖タイム

SNSではイエモン〜サカナの時点で大混雑ぶりが話題になっていて、レディオヘッド大丈夫か、規制かかるかと言われているなか、メッセからマリンへと大移動。7時前にマリンのアリーナ入口に着くと確かに人は多いけど意外にすんなり入れる。そんなことよりも問題だったのはここにきて低血糖になったこと。食事のあとすぐマーク・ロンソンで小躍りして大移動だったので、一気に血糖値が落ちた。自分では動悸が激しくなってきて低血糖っぽいなあ、一応救護スペース確認しとこ、くらいに思っていたんだけど、はたから見たら汗の量が尋常ではなかったらしい。自覚ないの怖すぎ。やっぱりこういったイベントはもう一人では行けない。

ただ脂をたくさんとったから後上がりすることはわかっていたので、とりあえず飴を一個だけ舐めた。10分程度で回復し、その後はまったく落ちなかったのでやっぱり脂って偉大。


Radiohead @Marine Stage

定刻の7時を15分ほどすぎたころ、ステージの明かりが落ちてバンドが登場。アリーナ後方のブロックにいたからほとんどステージ上は見えなかったけれど、遠くのほうから徐々に熱気が広がってくる。

もともと彼らにはあまり思い入れがなく、新譜もほとんどチェックしていないわたしにとっては、東京のファン・フレンドリーなセットリストはとても楽しめました。久々の"Creep"はもちろん、"No Surprises"や"Let Go"など、おそらく(単独を見に行くことはないので)わたしにとって最初で最後のレディへのライブで、過去の名曲をたくさん聴けたのは贅沢な体験。今やフェスも夏の文化として定着し、今回のわたしのようにライトなノリで楽しみにきている人が多くなっているなか、そうしたフェスの間口の広さにバンド側が合わせていくことを時代への「迎合」と見るか、「適応」と見るかは微妙な問題かもしれません。少なくともわたしは先鋭的であることだけが、時代を捉える、時代に向き合うということではないと思うし、レディオヘッド、あるいは"Creep"というメディアを通して何千人、何万人もの人をゆるやかに繋いだ今回のライブ("Creep"では会場大熱狂だったけど、ライブ全体で見ればリラックスしたムードで、会場全体にゆるやかな連帯が感じられた)は2016年の音楽体験としてやっぱり貴重なものだと思う。(まあ、今回の"Creep"をサマソニの奇跡再びと持て囃すのはなんだか日本的だなあと思うし、ビジネスの匂いがぷんぷんしますが)

(大ファンではないのであまり知ったようなことも言えないのは前置きしつつ)今回は"Creep"で〆ではなく、その余韻の中"Bodysnatchers"、"Street Sprit"と繋いでいて、ライブ全体の一パーツとして"Creep"が組み込まれていた印象を受ける。見ているこちらの興奮はすごかったけれど、バンド自身はいたって普通に演奏していて、バンドもファンも年をとる(と粉川しのさんが言っていて、当たり前だけど本当にその通りで)なかで過去と向き合う重要性が増していること、またそのなかでうまく現在とのバランスがとれていることを、わたしとしては感じたのでした。



サマソニお馴染みの花火。今年はアリーナから見たから真正面に綺麗に咲くのを撮れた。


帰宅したのは11時頃。すでに食後6時間くらい経っていたけど、眠前血糖は84くらい。ちょっと低すぎたけど脂肪分もまだ残っているはずなので、無難に卵パンあたりで瞬間的に血糖値あげて寝たら、翌朝が120ほど。いったん低血糖になったものの概ねいいコントロールでいけたのではないかな。ちなみにサマソニでは直射日光の中立ち歩くことが多いと思うので、熱に弱いインスリンを守る保冷グッズは必須。わたしは英国メーカーのインスリンクーラー、FRIOを使っています。一度の吸水で数日は保冷してくれるし、冷たくなりすぎないのでいいですよ。


そんなかんじでインスリンペン一本でもしっかり楽しめることが証明された今回のサマソニ。ラインナップ次第ではあるけど、また来年以降もよろしくお願いします。最後は大移動中にとった美しい夕陽。