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クリスティナ・ロセッティ『ゴブリン・マーケット』和訳


朝も夕も
乙女たちはゴブリンが呼び売りするのを聞いた
「我々の果樹園の果物はいらんかね
いらんかね、いらんかね
リンゴにカリン
レモンにオレンジ
ふっくらとした、鳥についばまれていないサクランボ
メロンにラズベリー
頬を輝かせたモモ
頭の黒いクワの実
野になる自由なクランベリー
野リンゴに木イチゴ
パイナップルにブラックベリー
アプリコットにイチゴ
みんな一斉に熟す
夏の陽気のもとで--
朝は去りゆき
美しい夜は過ぎゆく
さあいらっしゃい、いらっしゃい
蔓からとった新鮮なブドウ
ふっくらとすこやかなザクロ
ナツメヤシに酸味のあるプラム
みごとなナシにスモモ
ダムソンにコケモモ
味わって、試してごらん
カレンツにグズベリー
明るい炎のようなメギ
口を満たすイチジク
南からのシトロンは
舌に甘く、目にここちよい
さあいらっしゃい、いらっしゃい」

夜ごと
小川沿いのイグサのなかで
ローラは頭を傾けて聞き
リジーは赤らんだ頬を覆った
身を寄せてちぢこまる
ひんやりとした空気の中
互いに腕を抱き、口元は不安げで
頬と指先はひりひりとかじかむ
「近くにいて」ローラは云った
その黄金の頭をあげて
「小鬼の男を見てはいけない
彼らの果物を買ってはだめ
その飢えて渇いた根を
どんな土壌に下ろしているかわかったものじゃないでしょ?」
「さあいらんかね」小鬼は呼びかける
谷間をのそのそと歩きながら
「ああ!」リジーは叫んだ「ローラ、ローラ
小鬼を覗き見てはいけない」
リジーは目を覆った
目に映らぬように固く覆った
ローラはその輝く頭をもたげ
落ち着きのない小川のように囁いた
「ほら、リジー、見てよ、リジー
小さな男たちが谷間をのしのし降ってくる
籠を引きずってるものもいるし
皿を持ったものも
何ポンドもある重たい
黄金の皿を引っぱるものもいる
とっても甘いブドウがなる蔓は
どれほど美しく育つんでしょう
あの果樹の間をぬける風は
どれほどあたたかなんでしょうね」
「だめ」リジーは云った「だめ、だめ、だめ
彼らの誘いに惹きつけられちゃ
あの悪魔の贈り物には害があるんだから」
彼女はくぼんだ指を
耳に押しあて、目を閉じ走った
好奇心あるローラは留まった
一人ひとりの商人を不思議そうに眺めながら
あるものは猫の顔を持ち
あるものは尻尾を振る
あるものは鼠の速さでとぼとぼ歩き
あるものは蛇のように這う
ウォンバットに似たものは愚鈍で毛に覆われ、あたりをうろつき
ラーテルのようなものは大慌てで転げまわる
鳩が一斉にクークー鳴くような
声が聞こえた
やさしく愛に満ちた響きだった
心地よい陽気のもと

ローラは仄光る首を伸ばした
まるでイグサに囲われた白鳥のように
小川の百合のように
月灯りを浴びたポプラの枝のように
最後の縛りが解かれ
進水する船のように

苔むした谷間の裏手に
小鬼たちは向きを変え、群をなして進んだ
甲高く繰り返される呼び込みとともに
「いらっしゃい、いらっしゃい」
彼らがローラのいるところに辿り着いたとき
彼らは苔の上に立ち尽くし
にやにやとお互いを見あった
兄弟から奇妙な兄弟に
お互いに合図を出しあう
兄弟から狡い兄弟に
あるものは籠を下ろし
あるものは皿を掲げた
あるものは王冠を結い始めた
巻きひげと葉っぱとざらざらした茶色の木の実で
(町ではそんなものは売られていない)
あるものは黄金の重さの
皿と果物を持ち上げ、ローラに差し出した
「さあどうぞ、さあどうぞ」彼らはまだ叫んでいた
ローラはじっと見つめたが動かなかった
欲しくてもお金がなかったのだ
尻尾を振った商人は彼女に味わうよう勧めた
蜜のようになめらかな声音で
猫の顔はごろごろ喉を鳴らし
鼠のようなのろのろ歩きは
歓迎の言葉を発し、蛇のように這うものからも声が聞こえた
オウムの声をした陽気なものは
「かわいいオウムちゃん」のかわりに「かわいい小鬼ちゃん」と叫び
あるものは鳥のようにさえずった

甘いもの好きのローラはあわてて話した
「みなさん、わたしお金がないの
獲ったら盗みになるでしょう
お財布に銅銭がないし
銀銭もない
わたしが持っている金といえば
錆色のヘザーのうえで
風の強い日に揺れるハリエニシダの上にあるだけ」
「君の頭の上にたくさん黄金があるじゃないか」
彼らは一斉に答えた
「黄金の巻き毛で買いなさい」
彼女は大切な黄金の巻き毛を切り取り
真珠よりもかけかげのない涙を零した
そして美しく赤い彼らの果実に吸いついた
岩から滲み出た蜜より甘く
人を陽気にさせるワインよりも強く
水よりも清らかにその果汁は流れた
彼女はこれまでこんなものを味わったことがなかった
どれほど食べたら飽き飽きするのだろうか?
彼女はもっと吸って、吸って、吸った
未知の果樹園になる果物を
唇が痛むまで吸った
そして空になった皮を投げ捨て
種子を拾い上げた
一人で家路に就いたとき
彼女には昼か夜かもわからなかった


リジーはローラと門で落ち合い
たっぷりと思慮深く叱りつけた
「あなた、こんなに遅くまでいてはだめでしょう
黄昏は乙女にふさわしくない
谷間をぶらついてはだめ
小鬼たちの溜まり場だもの
ジーニーを覚えていないの?
彼女が月灯りのなか小鬼に出会い
その上等な贈り物をたくさん手にして
彼らの果物を食べ、彼らの花を身につけていたのを
花は何時も夏真っ盛りの
木陰で摘みとられたもの
でも昼の光のなかで
彼女はみるみる衰えていった
夜も昼も彼らを探したけれど
二度と見つけられず、衰弱し
年老いていった
初雪とともに倒れ
今日この日まで彼女の横たえたところには
まったく草が生えないの
だからぶらついてはだめ」
「もう、黙ってよ」ローラは云った
「もう黙ってよ、あなた
わたし好きなだけ食べた
でもまだよだれが出る
明日の夜はわたし
もっと買うから」とリジーにキスをした
「悲しみとはおさらば
明日はあなたにプラムを持ってきてあげる
枝つきで新鮮なの
サクランボも食べる価値がある
あなたわたしが味わったイチジクが
どんなものか思いもよらないでしょう
どんな氷のように冷たいメロンが
わたしじゃ持ち上げられないほど大きな
黄金のお皿に積まれていたか
どんなベルベットのけばをつけたモモだったか
澄みきった種一つないブドウだったか
あれが育った草地はいい香りに違いない
清らかな波を飲み込み
川辺には百合が生え
樹液は砂糖のように甘いに違いないわ」


黄金の頭を並べ
一つの巣のなかで羽をたたむ
二羽の鳩のように
二人はカーテンで覆われたベッドに横になっていた
一つの茎になる二つの花のように
二片の新雪のように
おそろしい王のための、金で先端を飾った
二本の象牙の杖のように
月と星は彼女たちを覗き込み
風は子守唄を歌った
のそのそとした梟は飛ぶのを慎み
蝙蝠は二人の寝床のまわりでは
バタバタと羽ばたきはしなかった
頬と頬、胸と胸を寄せ合い
一つの巣のなかで互いに身を固めた

朝早く
最初の雄鶏が朝を告げると
ミツバチのようにきちんと、かわいらしく忙しなく
ローラはリジーとともに起き上がった
蜂蜜をとり、牛の乳を搾り
家の空気を入れ換えて整えた
真っ白な小麦でケーキをこねる
かわいらしい口で食べるケーキを
それからバターをつくり、クリームを泡立てた
鳥たちに餌をやり、座って縫い物をする
控えめな乙女らしくおしゃべりをして
リジーは晴れやかな心で
ローラはぼんやりと夢のなか
一人は満ち足り、一人はいくぶん病んでいた
一人はただ明るい昼の楽しさにさえずり
一人は夜を待ち焦がれた

やがてゆっくりと夜が訪れ
二人は葦茂る小川に水差しを持っていった
リジーの様子はとても落ち着いていて
ローラはまるで跳ね上がる炎のよう
二人はごぼごぼと流れる水を深くから掬い上げ
リジーは紫と豊かな黄金色のアイリスを摘んだ
それから家路に向かって云った「夕暮れが
あの遠くの高い崖を赤く染めてる
行きましょう、ローラ、もう他の娘はいない
わがままなリスだって尻尾を振っていないし
動物も鳥もぐっすり寝ている」
しかしローラはまだイグサのなかでぐずぐずし
土手が急だからと云った

それからまだ時間が早い
露は落ちていないし、風も冷たくないと云った
ずっと耳をそばだてているけれど、聞こえない
あのいつもの売り込みが
「いらんかね、いらんかね」と
甘く誘う言葉を
繰り返す唄が
かつてはたったひとりの小鬼が
走ったり、尻尾を振ったり、転げ回ったり、のそのそ歩いたりするのさえ
気がついたのに
まして組になって谷間を歩き回る
きびきびとした果物売りの商人の群なら
気づかないはずもないのに

リジーが言葉を発した「ああローラ、行きましょう
果物売りの声が聞こえる、でも見ちゃいけない
この小川にこれ以上留まっちゃだめ
わたしと家に帰ろう
星が昇り、月が弧を描き
ツチボタルが閃光をきらめかせている
夜が闇を深める前に家に帰りましょう
雲が集まって
今は夏の陽気だけれど、
光を消し、わたしたちをずぶ濡れにするかもしれない
それに道に迷ったらどうするの?」

ローラは石のように冷たくなった
姉(妹)にだけあの売り込みが聞こえていると知って
あの小鬼の売り込み
「我々の果物はいらんかね、いらんかね」
彼女はもうあの美味しい果物を買えないのだろうか?
あの樹液たっぷりの草地を見つけられないのだろうか、
盲目になり、耳が聞こえなくなって?
彼女の命の木は根元から垂れてしまった
心の痛みで一言も発しなかった
ただ薄暗闇を見つめ、何も見つけられず
道すがらずっと水差しから水を零しながら、とぼとぼ家へ帰った
そしてベッドに這い、横たわり
リジーが眠るまでは静かにしていた
それから熱烈な切望のなか身を起こし
叶わぬ欲望に歯を軋ませ泣いた
まるで心が砕けてしまったように

日ごと、夜ごとに
ローラは虚しくも見張り続けた
ひどい痛みのどんよりとした静けさのなか
二度と小鬼の呼び売りを聞き取ることはなかった
「いらっしゃい、いらっしゃい」
彼女は二度と谷間に沿って果物を売り歩く
小鬼を見ることはなかった
昼の明るさが増すとき
彼女の髪は薄く灰色になり
満月が即座に朽ちていくように
彼女は衰え
炎を燃やし尽くしてしまった

ある日ローラは種子を思い出し
南に面した壁のわきに植えた
涙で水をやり、根を期待し
膨らむ芽を見守った
けれども何も起こらなかった
種は日の目を見ることも
水分の滴りを感じることもなかった
目元は沈み、口元は色褪せ
彼女はメロンを夢見た
まるで旅人が砂漠のような日照りのなかで
葉の茂る木々の影と波の虚像を見、
砂まじりの風のなかよりいっそう渇きに燃えるように

彼女は家の掃除をしなくなった
鳥や牛の世話も
蜂蜜とりも、小麦でケーキをこねるのも
小川に水汲みにいくのもしなくなった
ただ無気力に煙突の隅に座り込み
食べることもやめた

心やさしいリジーには耐えられなかった
ローラの身を腐すような苦しみを
見ているだけで共有できないことが
リジーには夜も朝も
小鬼の売り込みが聞こえた
「我々の果物はいらんかね
さあいらんかね、いらんかね」
小川で、谷間で
彼女には小鬼の重い足音が聞こえた
憐れなローラには聞こえない
声と騒ぎが
彼女を元気づける果物を買いたいけれど
大きすぎる犠牲を払うのは怖かった
リジーは墓のなかのジーニーを思った
花嫁になるはずだったのに
花嫁が求める喜びのために
病に倒れ、死んでいった
陽気な盛りのときに
冬のはじまりに
最初の艶やかな白露とともに
身の引き締まる冬の初雪とともに

ローラが衰弱し
死の扉を叩くほどになると
リジーはこれ以上
ことの良し悪しを較べてはいられなかった
財布に銀貨一枚を入れ
ローラにキスをし、
ハリエニシダの茂みがあるヒースを渡った
黄昏のなか、小川のそばで立ち止まり
彼女の人生で初めて
耳をそばだて、見つめはじめた

小鬼たちが皆笑った
彼女が覗き見ているのに気がついて
彼女に近づく、ぎこちなく歩き
飛び、走り、跳ねながら
息を吹きかけ
くっくと笑い、手を叩き、カラスのように
鶏のように、七面鳥のように鳴きながら
顔をしかめ
慇懃な態度で
表情をゆがめ
取り澄ましたしかめ面
猫に似たもの、鼠に似たもの
ラーテルやウォンバットに似たもの
蛇の速さで這うものは急ぎ
オウムの声のもの、モズヒタキは
あたふたと大慌てで
カササギのようにぺちゃくちゃ喋り
鳩のようにぱたぱた羽ばたき
魚が滑るように動いた
リジーにハグし、キスをして
ぎゅっと抱いて、やさしく撫でた
彼らのごちそうを
籠を、皿を差し出した
「我々の赤い、褐色の
リンゴを見てごらん
サクランボをくわえてごらん
モモをかじってごらん
シトロンもナツメヤシ
グレープもほしいなら
日を浴びた
赤いナシに
枝つきのスモモ
むしって吸ってごらんなさい
ザクロやイチジクもある」

「皆さん」リジーは云った
ジーニーを思いながら
「たくさんちょうだいな」
エプロンを広げ
彼らに小銭を投げた
「いや、我々と席につきなさい
敬意を表して一緒に食べるんだ」
彼らはにやりと笑って答えた
「我々の宴は始まったばかり
まだ夜も早い
あたたかく、露は真珠のようで
目は冴え、星も多い
こんな果物は
誰も運んではいけないよ
美味しさの半分が飛んでいってしまうから
露の半分が乾いてし
風味の半分がなくなってしまうから
だから座って我々とごちそうを食べなさい
客として歓迎しよう
喜んで、休んでいってくれ」
「ありがとう」リジーは云った「でも
家でひとりわたしを待ってる人がいるの
だからこれ以上会議はしていられない
たくさんの果物を
これっぽっちも売ってくれないなら
お代として渡した
わたしの銀貨を返してちょうだい」
小鬼たちは頭を掻きむしり始めた
もう尻尾を振ったり、喉を鳴らしたりはせず
ただ見るからに不服そうに
不満を垂れ、うなった
あるものはリジーを高慢で
ひねくれた無作法者だと呼んだ
彼らの声は大きくなり
悪魔のような見た目だった
尻尾を叩きつけ
彼女を踏みつけて乱暴に押した
肘で突き
爪で引っ掻き
吠え、鳴き、シャーッと声をあげ、あざけって
ドレスを裂き、ストッキングを汚し
髪の毛を根元から引っぱった
リジーの柔らかな足を踏んで
手をとり、果物を
彼女の口に押し込んで食べさせようとした

白く黄金色のリジーは立っていた
氾濫する川辺の百合のように
騒々しく潮が打ちつける
青い縞模様の岩のように--
白く唸りをあげる海に
取り残され
黄金の炎を送る灯台のように--
蜜の甘い花をつけ
蜂にひどく悩まされた
果実のなる白いオレンジの木のように--
旗を引きずり降ろそうとやっきな
軍艦に迫られた
金塗りの丸屋根と尖塔をたたえる王家の汚れなき町のように--


馬を水辺まで引っぱっていくことは一人でできても
水を飲ませるのは二十人がかりでもできない
小鬼たちはリジーを叩き、捕まえ
なだめて格闘し
脅し、懇願し
引っ掻き、インクのように黒い痣になるまでつねり
蹴り、打ちのめし
傷つけ、あざけったけれど
彼女は一言も発さず
唇を開こうとしなかった
彼らに口いっぱいに詰め込まれてしまわないよう
しかし心のなかでは笑っていた
顔中に垂れ
あごの窪みにたまり
凝乳のように震えて首に流れる果汁の滴りを感じながら
やがて邪悪な連中は
彼女の抵抗に疲れ切り
彼女に金を返し、通ってきた道に
果物を蹴散らした
根や種や芽は残していかなかった
あるものは地面に悶えるように潜り
あるものは輪を描いて
小川に跳び込み
あるものは音もなく風にのって疾走し
あるものは遠くに消えていった

ひりひりと疼く痛みのなか
リジーは進んだ
夜か昼かもわからず
土手を駈け上がり、ハリエニシダを割くように抜け
雑木林や小さな渓谷を通って
そして財布のなかで
お金が跳ねて唄っているのが聞こえた
彼女の耳にはそれは音楽のようだった
彼女は走った
まるで小鬼たちが嘲りや罵りや
あるいはもっと酷いことを言って
尾けまわしてくるのを恐れているように
しかし一人の小鬼も後を走ってはこなかったし
リジーは恐怖に苛まれてもいなかった
優しい心が彼女を風のような速さで
家へと走らせた
急ぐ気持ちと内なる笑みに息を切らせながら

庭につき、彼女は叫んだ「ローラ」
「わたしが恋しかった?
来て、キスをして
わたしの痣は気にしないで
ハグして、キスして、あなたのために
小鬼の果物から絞った果汁を吸って
小鬼の果肉を、小鬼の露を
わたしを食べて、飲んで、愛して
ローラ、わたしを大切に思ってね
あなたのために谷間に行って
小鬼の商人とやりとりしたの」

ローラは椅子から起き上がった
腕を宙に振り上げ
髪の毛をむしって
「リジー、リジー、あなたわたしのために
あの禁じられた果物を食べてしまったの?
あなたの輝きはわたしのように影を潜め
あなたの若い命はわたしのように衰えてしまう
わたしの零落のためにあなたも零落し
わたしの破滅のためにあなたも破滅してしまうの?
渇き、病み、小鬼に取り憑かれて?」
ローラはリジーにしがみつき
キスしていった
涙がもう一度
彼女のしぼんだ瞳を潤した
長く蒸し暑い干ばつのあとの
雨のように滴って
熱病の恐れと、痛みに震え
彼女は飢えた唇でキスをしていった

唇が焦げはじめ
果汁は彼女の舌にはニガヨモギのようだった
ローラはそのごちそうを嫌がった
取り憑かれたように身悶えし、跳ねて歌った
ローブを引き裂き
哀れなほど忙しなく手をもみ
胸を打った
彼女の巻き毛は全速力の走者が掲げる
松明のように
逃げる馬のたてがみのように
まっすぐに太陽へと進み
光に立ち向かう鷲のように
囚われのものが解放されたように
走る軍勢のなびく旗のようにはためいた

炎がすばやく彼女の血管に広がり
心臓を打った
そこで燻る炎とぶつかり
小さな火焔を圧倒した
ローラは名のない苦みでいっぱいになった
ああ!愚かにも、魂を費やす
こんな苦しみを選ぶなんて
生死を争うなかで感覚はなくなっていた
地震によって破壊された
町の物見やぐらのように
雷に打たれたマストのように
風が根こそぎにした木のように
真っ逆さまに海に砕ける
泡のたった水上竜巻のように
ローラはついに倒れた
喜びは過ぎ、苦痛も過ぎた
これは死か、生か?

死から生が
夜通しリジーはローラを見守り
弱まる脈をはかった
彼女の呼吸を感じとり
唇に水をはこび、涙と、葉で扇いで
彼女の顔を冷やしてやった
最初の鳥たちがひさしのまわりでさえずり
朝早く農民が黄金の穀物をとりに
とぼとぼ歩いていたとき
露に濡れた芝が
きびきびと吹き抜ける朝の風に頭を垂れ
新しい蕾が新しい日に
椀のような百合をせせらぎで花開かせたとき
ローラは夢から目覚め
かつてのように無垢に笑い
二度三度とならずリジーをハグした
彼女の輝く巻き毛には一筋の白髪も見えず
息は五月のように甘く
瞳の中には光が踊っていた


幾日も、幾週も、幾月も、幾年もあと
二人がともに妻となり
子をもったとき
二人の母の心は不安に苛まれた
彼女らの命は優しく脆い命と結び合った
ローラは幼き子を呼び
彼女の若い盛りのことを話した
遠く、戻らない
楽しかった日々のことを
あの溜まり場の谷間のこと
邪悪で奇妙な果物商人のこと
喉には蜜のようだけれど
血には毒になる果物のことを語り聞かせた
(町ではそんなものは売られていない)
そして彼女の姉(妹)がどのように
彼女のために命がけの危機に立ち向かい
炎のような解毒薬を勝ちとったかを話した
それから小さな手をとって
団結するように言った
「だって姉妹ほどの友はいないもの
晴れの日も雨の日も
退屈なときに元気づけ
道に迷ったら連れ帰ってくれて
よろめいたら持ち上げて
力づけてくれるような友は」

(拙訳)


翻訳センスがまるでないので、よければGoblin Market by Christina Rossetti - Poetry Foundationで原文を読んでみてください。