読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ご報告

くらし

誰が読んでいるのかわからないこのブログですが、ここからしか伝わらない人脈もあるので一応ご報告します。

昨年末、1型糖尿病を発症しました。日本で一般的ないわゆる生活習慣病2型糖尿病ではなく、よく子どもとか若年者がなるやつです。『パニック・ルーム』でクリステン・スチュワート演じる娘が患ってる病気。成人してからの発症は多くないですが、私はその珍しいケースの一人です。

1型糖尿病の発症原因は不明です。なぜだかわからないけど突然膵臓が必要な量のインスリンを分泌しなくなってしまいます。インスリンがないと血糖が抑制できないためガンガン血糖値が上がってしまいます。私は一時血糖値1100までいきました。そのときの体験はわりと本気で死の淵を見るようなもんでした。この経験でだいぶメンタルがタフになったような気がします。

1型糖尿病の難しさは、すなわち血糖コントロールの難しさと言えると思います。1型の場合、体内からはほとんどインスリンが出ないので、毎日定期的なインスリン注射が欠かせません。一生やり続けなければいけないことです。ただインスリンを打ち、血糖コントロールがうまくできさえすれば、健康な人と何ら違いはありません。

と言いつつ、その血糖コントロールというのがそう簡単にはできないから困る。血糖値を上げ下げする要因は食事、運動、ストレス、女性であれば月経の周期など、多岐に渡ります。様々な要因で血糖値は変動するので、普通であれば身体が血糖値の上昇下降に合わせてインスリンを調整するのだけど、私の身体はそれができないから、人工的にインスリンや食事の量・タイミングを調整してコントロールしてやる必要があります。私はまだ発症したばかりでこのコントロールの方法をまったく身につけられていません。正直これから一人でうまくやっていけるのかという不安もあります。コントロールできなければ糖尿病は悪化し合併症になる……そんな恐怖は少なからずあります。

でも、ある看護師さんと話していて、見えてきたことがあります。その方は「食べる量や生活に合わせてインスリンとうまく付き合えば自由に生活できる」「きちんと考えれば大丈夫、あなたならできると思う」と言ってくれました。そういう言葉を聞いているうちに、ああ、1型糖尿病は「知性」で闘う病気なんだなあという考えが浮かんできました。身体がまともに動かないなら頭でなんとかすればいい。私の身体は私の知性がコントロールするしかない。「知性は最高にセクシーである」し、また「最高の武器」にもなると今私は強く思います。発症してすぐは自分の身体が自分のものではなくなってしまう感覚がとてもしんどかったんだけれども、今は逆に病気をきっかけにして自分の身体を知り、コントロールできるような気がしている。知性とユーモアを持って病気と闘いましょう。誰に言ってるのかわからないけど、ひとまずの決意。

もともと映画も音楽も詩もごちゃまぜに書いていたブログなので、もしかしたら今後ここで糖尿病の話も書くかもしれません。でも愚痴や嘆きを喚くことはしません。病気とうまく付き合い楽しく生きるための試行錯誤をできるだけ前を向いて書こうと思っています。フェミニズムと同様に、おそらく1型糖尿病は私の人生の命題になります。だから何か発見があって、誰かに読んでもらいたいときに書きます。

ということで、簡単ですがご報告と相変わらずな人生思索の垂れ流しは終わりです。突然発症したせいで『コードネームU.N.C.L.E.』と『007 スペクター』の感想が書けなかったのが悲しいところですが、とりあえずアンクルは「ごちそうさまでした」、スペクターは「サム・メンデスやりきりすぎ」という一言感想を残しておこうと思います。アンクルはねえ、来たるガイ・リッチー円熟期に備えた過渡期の一作だと私は思いますよ。初めて*1自分と同年代ではない俳優を主演に起用し、リッチーの視点は主人公から脇役(要するにヒュー・グラント)に移ったと感じます。主人公との同一視(というよりも親友を撮るような親密さと身内感)、いつまでも遊んでいたい子どもの心を離れて、リッチーの映画的円熟がどのような形で実を結ぶかこれから10年が楽しみです。



……あれ、私は糖尿病の話がしたかったのではなかったか。


追記)
私が糖尿病生活について書きたいと思うのには一つ明確な理由があります。1型は小児時に発症することの多い病気であるため、1型関連の書籍はやたらに「10才で不治の病に」とか「一生インスリンを手離せない絶望」とか「なんでぼくだけ」とか、不安や恐怖を煽ったセンセーショナルな感動秘話風のものが多いです。いや、私は本の中身は読んでいないので、タイトルやコピーにそういったものが多いといったほうが適切ですが、そんなのタイトル見ただけでもう辟易します。簡単な病気ではないことは確かですが、悲劇ぶる気にはなれません。だからもっとユーモアを持って、地に足をつけて、糖尿病と付き合っていく生き方を模索し、何か形にしたいと思います。そう、私の目標は『火星の人』のマーク・ワトニーです。『火星の人』もまだまだ読み終わってないけどね。彼ぐらい自分の知恵とユーモアをフルに発揮して目の前の生に向き合うことができたら最高だと思います。

*1:正確には『スウェプト・アウェイ』以外