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「ロックンロールの自殺者」追記

文学

先日David Bowieの‘Rock ‘n’ Roll Suicide’を訳していて、ずっとどういう意味なのかわからなかった箇所の謎がやっと解けた。というお話を駆け足でする。

Chev brakes are snarling as you stumble across the road
But the day breaks instead so you hurry home
Don't let the sun blast your shadow
Don't let the milk float ride your mind
They're so natural - religiously unkind

“Oh no love!”の絶唱の前にくるこのヴァースの最後の一行。これの意味がいつもよくわからなかった。特にreligiously unkindの部分。「滲み出る薄情さ」とか「宗教的なまでに無慈悲」とか訳されているのを見たが、それでは意味が通らない。どう訳そうかと悩んでいていたところ、religiouslyには「定期的に、決まって、きちんと」というような意味があることを知った。ああ、なるほど、とそれですべてが解決した。religiously unkindーーきちんと不親切ーーということは、つまり何もかもが規則正しく、きちんと為されていて、心がこもっていない様を意味している。

では何が「きちんと不親切(前記事の訳では、決まって不親切とした)」なのか。それは前2行に出てくるthe sunとthe milk float(牛乳配達車)だ。太陽や牛乳配達車は規則正しく、決まった時間に現れては、いつも通りの一日をスタートさせる。そんな味気ない、unkindな「日常」にあなたの個性や心を潰させないで、とボウイは歌う。だから日があける前に、いつもの毎日が始まる前に、家へと帰らなくてはならないのだ、と。

どうやらロックスターというのは日常には存在しえないものらしい。だからこそ、ロックスター=ロックンロールの自殺者という等式が成り立つ。このヴァースは正直オフィシャルの対訳を見ても何を言っているのかよくわからないが、英語の文を一つ一つ読み解くと、ロックンロールの自殺者の本質が見えてくる。という意味で、この記事には音楽タグではなく、文学タグをつけておこうと思う。